天皇は,670年に,庚午年籍という倭国で最初の全国的な戸籍を作成させた。(実教出版『高校日本史B新訂版』)
乙巳の変(いわゆる大化のクーデター)の主人公の一人である中大兄皇子が,天智天皇として即位し,670年に作成させたのが庚午年籍というのは,日本史を学べば必ず覚える項目だと思う。それは最初の全国的な戸籍で,これによって徴兵による動員兵士数が予測できるようになり,白村江の戦い後の緊迫した情勢の中では非常に重要な意義を持つものだっただろう。
教科書では「倭国で」という言葉がついていることがおもしろい。前回のエントリとも関連することだが,この時期には「日本」という言葉がないのだから,「日本で最初」というのは間違っている。このような言葉に対する敏感さを持つことは必要だと思うので,この部分は「日本」とあえて書かなかったことを思いながら読むべき部分のように思う。
しかし,同じページの富本銭に関する註の記述に
飛鳥池遺跡(奈良県明日香村)から発見された日本で最初の銭。
とあるのは,言葉に敏感になっているからこそ笑ってしまうような記述に感じる。
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